生産管理の基礎知識 安全・設備
工場の安全対策とは?
転倒、巻き込まれ、墜落などの危険を減らすには。設備対策と日常の5S・KYT・ヒヤリハットをつなげて考えます。

工場の安全対策は、作業員の安全を確保するために行われる重要な取り組みです。安全対策の目的は、労働災害の発生を回避し、作業員の事故やケガを防止することにあります。製造業では、ヒューマンエラーや設備に起因する危険が潜んでいるため、安全対策は欠かせません。人が間違える可能性も前提にして、危険源を減らす設備・作業方法を考えます。以下は基本的な考え方です。実際の対策は設備の取扱説明書、適用法令、現場のリスクアセスメントに沿って決めましょう。
この記事の目次 全5項目
工場における典型的な事故と原因
転倒
転倒は、床のぬれ、段差、通路の障害物、照明不足などで起こります。人への注意喚起だけでなく、滑りにくい床や通路の確保など、作業環境を見直します。事故を未然に防ぐためには、作業員の安全意識の向上とともに作業環境の改善や安全対策を徹底していくことです。
挟まれ・巻き込まれ
工場における挟まれ・巻き込まれ事故は、重傷を負うケースがあります。挟まれ・巻き込まれの事故の原因は、機器の整備不良やヒューマンエラーなどです。作業員が機器に手や体を近づけてしまったり、機器の部品が飛び出してきたりすることで、手や足が挟まれたり、体が巻き込まれる事故が発生しやすくなります。
危険な可動部にはガードや安全装置を設け、人が触れない仕組みを優先します。清掃・点検・詰まりの除去などでは、機械を停止し、動力を遮断して、不意に再起動しない措置を取ります。距離を空けるだけでは十分な対策になりません。
転落・墜落・踏み外し
高所からの転落や墜落、段差や階段からの踏み外しなどがあります。特に高所からの転落はケガをするだけでなく、死亡する恐れもあります。転落・墜落・踏み外し事故の原因は、足場や安全柵の不備、段差の存在、作業員の不注意などです。たとえば、足元が不安定な状態での作業や周囲の確認が不十分な場合などに生じやすいでしょう。
高所作業そのものを減らす方法を検討し、必要な場合は適切な作業床や手すりなどで墜落を防ぎます。作業条件に合った墜落制止用器具や保護具、教育も必要です。ヘルメットだけで墜落を防げるわけではありません。高所作業をする場合には、作業場所の工程を管理する職長など役職者への相談と報告を義務付けるなどのルールを徹底することも大切です。
切れ・こすれ
切れ・こすれ事故は、切り傷や、すり傷につながり、作業員に被害をもたらします。事故の原因の多くは、カッターナイフの誤った使用や回転する刃物に誤って触れること、道具や設備に体をこすってしまうことです。たとえば、カッターナイフの刃先を自分に向けて使用することや、手元が安定しないまま設備を使用し、回転する刃物に触れ、手などを切ってしまうことがあります。
刃や鋭利な部分へ触れにくい工具・治具・カバーを使い、安定した作業方法にします。耐切創手袋は作業に適する場合に使用しますが、回転体の近くでは巻き込まれる危険があるため、機械や作業の指定に従います。設備を動かしたまま手を入れたり、手を固定したりする方法で対処してはいけません。危険を避けられる作業方法を決め、訓練と設備対策を組み合わせましょう。
感電事故
感電事故によって重度の火傷や意識不明、心臓停止などの重傷を負うことがあり、場合によっては死亡するケースもあります。配線や絶縁の劣化、漏電、充電部への接近などが原因になります。異常がある設備を使い続けず、決められた手順で使用を止め、担当者へ連絡します。電気設備の点検や修理は、必要な資格・教育を受けた担当者が、停電や検電など適切な手順で行います。漏電保護、接地、絶縁などの設備対策も合わせて管理します。
5S
5Sとは、職場の改善活動に使用される手法の1つで、整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の頭文字をとって名付けられたものです。5Sに工場が取り組む目的は、生産性や、安全性、品質などの向上です。
整理
整理は、必要なものと不要なものを分け、不要なものを取り除くことです。通路や作業場所を確保することで、安全にもつながります。たとえば、作業台付近に散らかった工具や資材、作業途中で放置された製品などは、事故の原因になりやすいのです。整理の実践は、不要なものの廃棄が重要になります。
整頓
5Sにおける整頓の目的は、作業場や倉庫内のものを整理して、必要なものをすぐ使えるようにすることです。必要なものをすぐに取り出せることで無駄な時間を省けます。たとえば、部品を収納する棚やラックを整理し、部品の種類や数量に応じて配置することで、必要な部品がすぐに手に入るのです。
必要なものがすぐに手に入るようになると、無駄な動きを省けます。
清掃
5Sにおいて清掃の目的は、機械や設備の異常や不具合の早期発見です。清掃によって汚れを取り除き、機械や設備の点検を定期的に行うと、問題を早期に発見・解決できます。たとえば、通常よりも切削油が多く消費されている工程では、設備が破損して油漏れを生じていることがあるのです。
常に清掃が行き届いている職場では、異常がすぐに発見できます。また、ホコリなどのゴミが製品に付着しにくくなるので、品質異常の発生防止にもなるのです。
清潔
5Sにおける清潔とは、3S(整理・整頓・清掃)が標準化されているかどうかです。3S(整理・整頓・清掃)が徹底できており、業務に必要なものがいつでも取り出せる状態の保持が「清潔」です。
躾(しつけ)
躾(しつけ)の目的は作業員への教育です。ルールや規律を守り、決められたことを実行できるように教育して習慣づけます。作業における手順を守らなければ、不良品が出る恐れがあるためです。たとえば、生産ラインでは、正しい作業手順を守ることで品質の確保や作業効率の向上を図れます。
また、職場内の安全管理においても、ルールや規則を守ることが重要です。
KYT
KYTとは「危険(Kiken)予知(Yochi)トレーニング(Training)」のことです。KYTの目的は、訓練を行って作業員自身が危険を予知できるようにすることです。KYTでは、作業状況を表したイラストシートを使うことがあります。イラストシートには、作業場所や機器の配置、作業手順、危険箇所などが描かれている点が特徴です。
訓練の参加者らは、イラストシートを用いながら作業中の危険について話し合うことができます。KYTの実施によって、作業員が慎重に作業を行うようになるため、安全性が高まる効果を期待できるでしょう。
ヒヤリハット
ヒヤリハットは、事故には至らなかったものの、危険を感じた出来事です。たとえば、工場内で歩行帯の白線が引かれていなかったため、フォークリフトに作業員が撥ねられそうになったケースがヒヤリハットです。工場で働く作業員が、思わずヒヤリとしたことやハッとした出来事をヒヤリハットと呼びます。
ヒヤリハットを全作業員で共有、改善策を検討し、重大な事故の防止を目指すことが重要です。ヒヤリハットで済んだ出来事でも、次は重大な事故につながる恐れがあります。ヒヤリハットの共有によって、ほかの作業員も同様のリスクに気づけるため、事故防止が期待できるのです。
おわりに
様々な危険物を扱う工場では1つの事故が命に関わることもあり、安全を守るためにルールの厳守を徹底しなければなりません。危険の大きさに応じて対策の優先順位を決め、実施した後も効果を確認します。ルールの追加だけで終わらせず、安全に作業できる設備と仕組みを整えていきましょう。

