生産管理の基礎知識 在庫管理・棚卸
在庫とは?
在庫管理の目的と基本
在庫の種類から、増える理由、現場で見直すポイントまで。図解と具体例で、在庫管理の基本を押さえます。

欠品は避けたい。でも、倉庫には在庫が増えていく。生産管理の仕事では、この両方に悩むことが少なくありません。
在庫を減らす前に、なぜその在庫が必要なのかを整理してみましょう。この記事では、在庫の種類、発生する理由、現場で見直したいポイントを、図解と具体例で説明します。
この記事の目次 全5項目
01在庫とは?まずは3つの種類を押さえる
在庫とは、販売や生産に備えて保有しているモノのことです。製造業では、工程のどの段階にあるかによって、大きく「部品・原材料」「仕掛品・半製品」「完成品」に分けて考えると整理しやすくなります。
部品・原材料:製品をつくるために仕入れたもの
鉄材や樹脂材など、加工して使う素材が「原材料」です。ねじやナットのように、組み付けて使うものは「部品」に当たります。
発注してから入荷するまでの時間を調達リードタイムと呼びます。同じ使用量でも、調達に時間がかかるものほど、その間に必要な数量を見込んでおく必要があります。使用量の変動や納入のばらつきも含めて、発注する時期と量を決めます。
仕掛品・半製品:製造の途中にあるもの
仕掛品(しかかりひん)は、加工や組立を始めているものの、まだ完成していないものです。例えば、焼く前のパン生地や、切断を終えて次の加工を待つパイプなどがあります。
半製品は、製造途中でも、一定の工程を終えて中間製品として扱えるものを指します。半製品には、その状態で販売・出荷できるものもあります。「完成品ではないから販売できない」とは限りません。[1]
現場によって呼び方や管理の区切りが異なるため、「どの工程を終えたものを、何として数えるか」を社内で揃えておくことが大切です。
完成品:顧客に販売できる状態になったもの
焼き上がったパンや、組立・検査を終えたノートパソコンのように、販売できる状態になった在庫が完成品です。必要な検査や包装をどこまで含めるかは、製品や会社の管理基準によります。
完成品には材料費だけでなく、加工や組立にかかった費用も積み重なっています。保管が長引けば、資金が回収されるまでの時間も長くなります。販売や出荷の予定に合わせて、必要な量を持つことが重要です。
02在庫管理の目的は、生産と販売を支えること
「在庫は悪だ」「とにかく減らすべきだ」と言われることがあります。確かに、多すぎる在庫は資金や保管場所を圧迫します。ただ、在庫を減らした結果、生産が止まったり納期を守れなくなったりしては、会社にとって損失です。
必要な在庫を確保しながら、余分な在庫を減らす。
この両立が、在庫管理の基本です。
多すぎても、少なすぎても困る
在庫が多すぎると、保管費がかかるだけでなく、劣化や陳腐化によって使えなくなるリスクも増えます。一方、少なすぎると、欠品によるライン停止や納入遅延、販売機会の損失につながります。
多すぎると
- 資金が在庫に滞留する
- 保管場所・管理の手間が増える
- 劣化・廃棄のリスクが高まる
少なすぎると
- 必要なときに使えない
- 生産や出荷が止まる
- 納期や販売機会に影響する
適正な在庫量は、製品や生産方式によって変わります。現在の在庫だけでなく、受注や生産の予定、調達にかかる時間を合わせて見る必要があります。
「必要なものを、必要なときに使える」状態をつくる
在庫管理では、何が、どこに、いつ、どれだけ必要なのかを押さえます。結果として残った数量を見るだけでなく、先の予定を踏まえて在庫をコントロールする考え方です。

販売計画の変更、生産の遅れ、不良の発生、仕入先の納入遅延などは、いずれも在庫に影響します。在庫の問題を倉庫の中だけで解決しようとせず、営業・生産・購買の情報をつなぐことが、生産管理の大切な役割です。
03在庫はなぜ発生するのか
受注生産でも、材料の調達や工程間の待ち時間があれば在庫は発生します。必要な在庫と、改善できる在庫を分けるには、まず発生する理由を知ることが欠かせません。
1.欲しい時期と、つくれる時期が合わない
調達や生産に3日かかるのに、顧客から「今日欲しい」と言われた場合、その都度つくり始めるのでは間に合いません。この時間の差を、あらかじめ持っている在庫で埋めます。

工程の待ち時間や物流のムダを減らし、リードタイムを短くできれば、必要な在庫を減らせる余地が生まれます。単に在庫量を減らす指示を出すより、なぜ時間がかかっているのかを見直すことが有効です。[2]
2.必要数と、生産・購入する単位が合わない
必要なのは100個でも、設備の都合や仕入先の最低発注数量によって、1,000個単位でつくったり買ったりすることがあります。その差の900個が在庫になります。
ロットを小さくすれば、段取り替えや配送の回数が増えることもあります。在庫だけでなく、段取り・運搬・保管の負担も含めて、無理のない単位を検討します。
3.不良を見込んだ数量と、実際の出来高がずれる
不良が発生する工程では、必要な良品数を確保するために、投入数を多めに設定することがあります。実際の歩留まりが想定よりよければ、必要数を超えた分が在庫になります。
歩留まり97%で、良品100個を計画する例
投入数の目安は 100 ÷ 0.97 ≒ 103.09個。1個単位で投入するなら、切り上げて104個です。
これは一定の歩留まりを仮定した計画上の目安です。実際の良品数にはばらつきがあるため、100個を保証する計算ではありません。
過去の不良率をそのまま使い続けず、工程の改善や品質の変化に合わせて、投入数の基準も見直します。
4.必要な時期の需要が、生産能力を上回る
5月末に1,000個納入する必要があるのに、ひと月に500個しかつくれないとします。4月と5月に500個ずつ生産すれば間に合いますが、4月に生産した500個は、納入まで在庫として保管することになります。

こうした在庫は、需要の山に対応するために計画して持つものです。生産を平準化する効果と、保管期間・保管場所の負担を合わせて考えます。
5.季節需要や設備停止、供給の乱れに備える
季節商品やキャンペーンに向けた積み増し、設備改造や工程移管の前倒し生産、需要や納入のばらつきへの備えなど、目的を持って在庫を確保する場合もあります。

ここで大切なのは、「何のために、いつまで、どれだけ持つか」を決めておくことです。目的を終えた在庫が、そのまま残り続けていないかも確認しましょう。
04現場で起きやすい3つの課題と、見直し方
在庫を適正にしたいと思っていても、現場では簡単に進まないことがあります。特に見直したいのが、在庫の見える化、担当者への依存、欠品に対する不安です。
在庫が「どこに、いくつあるか」分からない
品目数が多い、置き場が分散している、入出庫の記録が後回しになる。こうした状態では、帳簿の数字と実際の在庫が合わなくなり、必要な発注や生産の判断も難しくなります。
まずは品目名・置き場・数える単位を揃え、入出庫をいつ誰が記録するかを決めます。バーコードやQRコード、在庫管理システムは、その運用を続けやすくするための道具です。道具の導入と、記録するルールづくりを一緒に進めることが大切です。[3]

発注や生産の判断が、ベテラン任せになっている
経験のある担当者は、仕入先の特徴や出荷の傾向など、多くの事情を考慮して判断しています。その経験は大切なものです。ただ、判断の理由が本人の頭の中にしかなければ、休暇や異動のたびに業務が不安定になります。
すべてを一度にマニュアル化する必要はありません。「この品目はなぜ多めに発注するのか」「納期が延びたときは誰に確認するのか」といった、日々の判断から書き残していきます。

欠品が怖くて、在庫を減らせない
欠品でラインを止めたくない、納入を遅らせたくない。その思いから在庫を多めに持つのは、現場ではよくあることです。担当者の気持ちだけの問題にしても、改善は進みません。
必要なのは、需要や納入のばらつきに見合った基準と、異常が起きたときの対応です。補充するタイミング、持っておく数量、基準を見直す条件を決め、関係者で共有します。

在庫が多いか少ないかを、担当者の感覚だけで判断しない。実績を見ながら基準を直していくことで、無理のない管理に近づけます。
05まずは、在庫の中身と持つ理由を確認する
在庫管理に、どの工場にも当てはまる一つの正解はありません。つくるもの、調達にかかる時間、顧客が求める納期によって、必要な在庫は変わります。
それでも、見直しの出発点は共通しています。何が、どこに、いくつあり、なぜ持っているのか。まずはこの4つを確認することです。
- 部品・原材料、仕掛品・半製品、完成品を分けて把握する
- 在庫が発生する理由と、必要な期間を確認する
- 入出庫の記録と、発注・生産の判断基準を揃える
在庫量だけを追うのではなく、生産と販売を安定して続けるために管理する。その視点で、自分の現場の在庫を見直してみてください。
参考資料
- 総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査 製造業 調査票の記入のしかた」7ページの製造品・半製品・仕掛品の区分を参照
- 中小機構 J-Net21「現場での在庫管理の方法と、適正な在庫量の考え方」在庫の把握と、生産リードタイムに応じた在庫量の考え方を参照
- 中小機構 IT戦略ナビwith「在庫管理システム」入出庫の記録、在庫の可視化、業務手順の標準化を参照

