生産管理の基礎知識 環境・SDGs
製造業における環境問題
排出・排水・廃棄物・資源の使用を、製品の一生から考える。工場で把握したい環境負荷と改善の視点をまとめます。

近年、国際社会では、地球規模での環境保護が大きなテーマとなっています。そこで今回は、企業の活動と環境の関わり方を考えましょう。これまでの「大量生産、大量消費、大量廃棄」という企業活動が、環境に弊害をもたらしていることは今や明白な事実です。現在、企業に求められているのは、よいものをタイムリーに顧客に提供すると同時に、地球環境に配慮した事業を展開することです。
この記事の目次 全5項目
製造業が担うべき環境負荷への責任とは
特に製造業では、商品の生産活動そのものが環境に大きな影響を及ぼします。製品の種類によっては、製品ライフサイクル全体(素材製造→製品製造→使用→破棄・リサイクル)を通して、環境への負荷は大きなものとなります。それゆえ、製品の生産・設計の責任者は、生産時や製品ライフサイクルが環境に与える負荷を十分に考慮し、管理しなければなりません。
ISO 14001は、環境マネジメントシステムに関する国際規格です。組織が環境への影響を把握し、目標を定め、継続的に改善するための枠組みを示しています。企業が環境管理を継続させていくには、ISO14001を参考にしたシステムを構築するとよいでしょう。もちろん、ISO14001の取得は強制的なものではありません。企業が環境管理システムや仕組みを作り上げることが大切なのです。
工場が配慮すべき環境問題とは
工場が特に配慮すべき環境問題にはこんなものがあります。
大気汚染
大気汚染には、窒素酸化物、硫黄酸化物、ばいじんなどの排出が関わります。二酸化炭素などの温室効果ガスによる気候変動とは、対策や指標を分けて捉えます。アレルギー症状やぜんそくといった健康被害が出ることもあり、大気汚染による公害としては「四日市ぜんそく」が有名です。
塗料やインク、洗浄剤などから出るVOC(揮発性有機化合物)も、光化学オキシダントなどの発生に関係します。扱う物質と排出源を確認しましょう。
水質汚染
化学物質や有害物質を含んだ工場排水が川や海に流れ込むと、水質の悪化により生態系や健康に悪影響を与えてしまいます。水質汚染による公害病では、メチル水銀化合物による「水俣病」の被害が有名です。
廃棄物処理
工場では排ガス、排水以外にも、生産活動の過程でたくさんの廃棄物が発生します。鉄クズ、廃油、ダンボールなどさまざまな種類があり、これを処理するためにまたエネルギーや環境資源が必要になってしまいます。また、適切な処理をする費用や手間を惜しみ、不法投棄するという問題が発生することもあります。
天然資源の枯渇
天然資源には限りがあります。燃料となる石油や石炭、天然ガス、材料とする木材なども、限りある資源として使いすぎない配慮が必要です。これらの環境問題に配慮して環境対策に取り組むことは、環境を守ることはもちろん、取り組みの過程でコスト削減や新しいビジネス創出のチャンスがあったり、企業の評価が上がって認知が広がったり、優秀な人材確保の可能性が広がるメリットもあります。
環境への影響を可視化する
まず、どの工程で何を使い、何が排出されるかを把握しましょう。データを揃えると、環境負荷が大きい箇所や改善の効果を確認しやすくなります。確認するデータには、次のようなものがあります。
- 原材料の投入量
- エネルギーの使用量
- 化学物質やCO2の排出量
- 廃棄物の発生量
など、測定可能なデータのことです。本来、これらのデータは、使用される物質ごとに把握しておくのが望ましいのです。「測定なくして管理なし」という言葉が表すように、測定値が把握できなければ的確な環境管理は不可能なのです。
環境保護を進めることのメリット
また、環境保護には費用がかかるため、法規制以上の環境管理活動は経営上でマイナスになるという考え方もあります。確かに、環境に配慮した設備の導入にはコストがかかります。しかし、効率性を追求していくと、結果としてコストダウンとなり、環境の保護につながることも多いのです。
顧客側も、地球環境の保護は企業の使命であるという考え方が広まりつつあり、環境管理に力を入れることは、企業のイメージアップにもなるでしょう。認証の維持だけが目的にならないように、日々の管理と改善に結び付けることが大切です。このような問題を避けるためにも、これからは環境管理の意味を正しく認識し、システム構築をリードできる人材が強く求められることでしょう。
おわりに
環境への対応は、設備や製品、扱う物質によって変わります。投入量と排出量を把握し、自社で改善できるところから具体的に取り組んでいきましょう。

