製造業のBCPとは
BCP(事業継続計画)は製造業にとっても重要なものです。
「BCPは国や自治体、インフラ企業やグローバル企業などがつくる特別な計画で、
製造業では防災対策があればよい」と考えられがちですが、それは誤りです。
実際には、在庫管理やサプライチェーンをもつ製造業こそ、
事業規模の大小を問わずBCPを必要とする業種です。
製造業がBCPを策定すべき理由と、
製造業におけるBCPの概要、
具体的に注目したいポイントについて解説します。
BCPとは
BCP(事業継続計画)は、
大規模災害などにより自社に甚大な被害が発生したときでも事業を中断させない、
中断した場合でも早期に復旧し事業への影響を抑えるための計画です。
災害発生直後は、何よりもまず命を守り安全を確保する必要がありますが、
企業活動を中断し、再開できない期間が長くなり生産が停滞することは、
取引先からの信頼を落とすことに繋がります。
その結果、早く復旧した競合他社にシェアを奪われるおそれもあります。
BCPは、災害や事故によって企業活動が脅かされたときでも、
事業を継続させるための計画です。
BCP策定の際には、自社にとって中核となる、
どうしても中断してはならない事業を絞り込み、
その中核事業を維持し続けるための対策を事前に行います。
製造業のBCPとは
日本は「災害大国」と呼ばれるほど自然災害が多く発生するため、
その対策でもあるBCPは、どの組織にとっても必要とされています。
特に製造業は、
その工程の中で多くのサプライヤーから資材や部品を調達し、
複雑なサプライチェーンを形成しています。
そのため、災害発生時にどの工程の何がボトルネックになるかを見定め、
事業を守る施策をしなければ、グループ全体へ大きな影響を及ぼしてしまいます。
BCPの重要性が国内でクローズアップされたのも、
製造業の被災がきっかけでした。
2007年7月、
新潟県中越沖地震(最大震度6強)が発生したときのことです。
その3年半近く前の2004年10月に最大震度7の新潟県中越地震が発生しており、
地震対策はある程度行われていました。
このため人的被害は比較的少なかったのですが、
自動車のエンジンのピストン部分を作っている企業の設備が
転倒して製造が止まってしまい、
全国の自動車メーカーが生産停止になる事態が発生しました。
この教訓もふまえ、
2008年に中小企業庁が「中小企業(事業継続計画)BCPガイド」を策定。
運用指針が公開されています。(参考:中小企業BCP策定運用指針)
事業を停止させないために
製造業が事業を止めないために最も重要なポイントは、
工程内の資材や部品が途絶えたケースを想定して対策することです。
災害によって流通が途絶える場合、
再開までには通常3日程度、
大規模な災害なら7日程度の時間を要します。
その期間、自社の最も中核となる事業が継続できるだけのリソースを、
社内外を問わず確保しておく必要があります。
自社内の設備が被災しないための対策や人員確保に加え、
流通が停止している間の資材や部品が滞らないよう備蓄しておく在庫調整も重要です。
ただし、在庫は存在しているだけでコストがかかります。
いざというときの備えで平常時の効率を低下させては元も子もありません。
在庫を抱えてでも備えておくべき案件は何なのかを見極め、
在庫の循環を意識した業務の棚卸しをしましょう
また、最近はサイバーセキュリティの観点でも、
インシデント対策訓練なども重要です。
様々な観点において、
有事を見据えたシミュレーションをしておくべきでしょう。
おわりに
ものづくりで日本の経済を支える製造業は、
現場が止まると致命的なダメージを受けるため、
最もBCP対策を必要としている業種ともいえます。
いずれにせよ、BCPは策定するだけでは
「絵に描いた餅」です。
平時から訓練や研修を行ってBCPの実行性を高め、
事業継続力の向上を図っていきましょう。
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