生産管理システムの基本を押さえよう

生産管理システム

生産管理システムと聞いて、
どのようなことを思い浮かべるでしょうか。

生産計画や所要量の計算、進捗管理など、
様々な機能を想像するかもしれませんが…

その範囲や役割は、実に広範囲に及んで、
「頭の中で整理しきれていない」という人も
多いのではないでしょうか。

今回は、生産管理システムや
その関連するシステムの全体像を整理しながら、
生産管理が理解しておくべき部分を抽出してお伝えしていきます。
ぜひ最後まで読んでみてください。

◆生産管理業務の課題

世の中はスマートフォンやAIの登場によって、
便利で機能的なシステムであふれています。

スマホで一つで何でも発注できたり、
AIで簡単に文章や画像を生成できるようになってきました。

しかしながら、生産管理に必要な業務は、
ほぼ手作業で行われている、というのが実態です。

とはいえ、工場の中でも、自動化される設備やロボット、
自動搬送車など、確かに増えてきたのも事実です。

ですが、こうした設備を動かすための「指示」は
どこからくるのでしょうか。

ほとんどの場合、人が手作業でつないでいるんです。

生産計画を人が立案し、その指示を紙で現場に渡します。

現場では生産順序を人の頭と手で考え、
必要な部材を人が判断して引き取りに行ったり、
機械の段取りや事前準備を行い、製造を開始します。

生産の実績や入荷数の実績は紙で集められて、
生産管理部や購買部で実績登録をして、
次の生産計画や発注計算に使われます。

そういったように、
まだまだシステムが十分に機能していない職場も多いのではないでしょうか。

もちろん、生産管理の基幹システムが導入されている企業も多くありますが、
大半の企業では生産計画や生産指示、実績収集は人の手に頼っていて、
システムはあくまで一部の計算処理と実績登録、伝票発行に使われるだけ、
といった状況で、
本当の意味で「システム化されているとは到底言えない」状況が実態です。

そういった課題を正しく理解して、
生産管理の業務をレベルアップさせていくためにも、
生産管理システムの全体像をつかんでいきましょう。

製造業におけるシステムの違い・全体像

企業や工場で扱う情報やシステムは多岐にわたります。
少し整理していきましょう。

大きく3つのレイヤーに分けることができます

計画実行制御の3つです。

順に説明をしていきます。

◆計画層

計画層は、一般的に業務全体の効率化を考えた機能が備わっています。

経営資源の一元管理による「経営判断の迅速化」と「業務効率化」が一番の目的になります。

生産計画を立案したり、
必要な発注数を計算したり、
在庫量の把握ができるのが特徴です。

ERPとして、統合型のシステムを導入されている企業も多いことでしょう。

ERPなどのシステムを活用することで、
各部門の業務データを一元管理でき、データの抽出・分析の効率化が図れます。

これによりタイムリーに経営状況や課題の把握が可能になり、
合理的な経営判断の迅速化につながるわけです。

◆実行層

実行層のシステムとしての代表は製造実行システム、いわゆるMESです。

ERPから計画を受けて、工程ごとに展開し、
製造指示として各現場に落とし込んでいきます。

製造順序の計画や設備の割り付けなどといった、
小日程計画を立案するようなスケジューラなどを指します。

設備能力や人員配置を最適化したり、
効率の良い段取り、製造順序をコントロールする機能です。

他にも、生産の実績を収集したり、
品質管理、トレーサビリティの管理など、
現場に対する指示を出したり、
実績を管理するような機能が実行層と分類されます。

◆制御層

続いては制御層です。

いわゆる工場インフラと呼ばれるレイヤーで、その代表はPLCです。

生産設備やその他工場内における設備をコントロールして、
制御する仕組み一体を指します。

主に、設備制御装置や、ハンディターミナル、
計測器やIoTセンサーなどなど、
各仕組が工場内でネットワークを通じつながっていることで、
制御されているレイヤーです。

MESから受けた指示を設備に連携できるように変換して渡したり、
設備から集めたデータを貯めて変換してMESに受け渡す機能を持っています。

制御層は、万一にでも、
ウイルス感性やハッキングなどされると、
製品の品質に直接影響が出るため、
セキュリティ関連の対策も最も強固に施す必要がある、
というのも特徴の一つです。

◆生産管理システムとは?

これまで説明してきた3つのレイアーに対して、
「生産管理システム」はどの部分かと言うと…
一般的には下図の辺りの領域や機能を指して、生産管理システムと言います。

ERPの一部に生産管理関連の機能があったり、
工場を管理・統制していくために、MESの機能を備えています。

もちろん、このあたりの分類分けは
導入されているシステムのフレームワークによって異なりますが、
一般的な概要や機能の分類を理解しておくと良いと思います。


生産管理システムの目的や役割

ここからは、
生産管理システムに、よりフォーカスを当てて、
その目的や役割について再確認していきましょう。

◆生産管理機能とは?

生産管理という仕事の機能は大きく2つに分けることができます。
したがって、必要なシステム機能も同じように
分類して分けていくことが望ましいです。


◆生産マネジメント 機能

1つめが、「生産マネジメント機能」です。
生産を適正に成り立たせるために、
ヒト・モノ・カネを計画的に準備し、
未来の変化やリスクに対して、
計画、分析、調整、意思決定を伴う、
工場における経営的業務の機能を指します。

Production Managementですね。

販売計画や生産計画、
設備能力の計画や人員計画、
部材の所要量計算によって、
必要数を算出することもこの機能一つです。

会社によっては、
生産管理ではない部門業務かもしれませんが、
原価計算やサプライヤーとの調整機能なども、
機能的にはこの中に入ってきます。

集めた情報を整理して、工場内に発信し、
PDCAを回しながら、工場をマネジメントしていく役割を持っています。

◆製造および工程の管理/統制機能

そして2つめが「製造および工程の管理/統制機能」です。

これは、生産マネジメントによって準備されたヒト・モノ・カネに対して、
計画通りに生産活動を行えるように、
指示を出し実行に移す機能になります。

いわゆる、ProductionControlです。

具体的には、現場に対して製造指示を出しだり、
発注したものが正しく入荷されているか管理したり、
生産実績や出荷実績を正確に記録したり、
計画通りに進んでいるか進捗管理をするような機能
が含まれます。

特に、実績管理については、手作業による記録では
正確性や情報の粒度が荒くなってしまう可能性があるので、
生産管理システムが持つ役割は大きくなってきています。

より正確な情報を扱い、システマチックにコントロールしていくことで
様々なモノや情報があふれている製造現場の統制をとりながら、
改善活動を進めていくわけです。

生産管理システムの主な機能

では次に、生産管理の業務と照らし合わせながら
その機能について紹介していきます。

こちらは、
生産管理システムにおける一般的な機能関連図になります。
左側から得意先からの受信する情報や関連するマスタがインプットされ、
右側の仕入れ先や関連部署へアウトプットされる流れを表しています。

◆販売管理

続いては生産計画。
生産計画どの製品を、いつ、どれだけ、生産するのかを計画する機能です。

立案された生産計画に基づいて、さまざま数字やデータが算出され、
各業務の起点となり、多くの人が動くような情報になるため、
非常に重要な役割を持っています。

◆生産計画

続いて生産計画とは
どの製品を、いつ、どれだけ、生産するのかを計画する機能です。

立案された生産計画に基づいて、さまざま数字やデータが算出され、
各業務の起点となり、多くの人が動くような情報になるため、
非常に重要な役割を持っています。

▼生産計画について学びたい方はコチラもどうぞ▼
生産計画の目的と種類

◆所要量計算(MRP)

続いては所要量展開、いわゆるMRPと呼ばれる機能です。

MRPとは。立案された生産計画を基に、
部品表を参照し、子部品に展開し、各品目の必要数(所要量)を算出
します。

扱っている製品の種類が多くなればなるほど、
このMRPが重要になり、
Excelや手作業では不可能な部分をシステムが担ってくれています。

こういったMRPによって、
原材料や部品の必要数量を正しく計算することができ、
適切に資材の発注を行うことができるわけです。

◆購買管理

購買管理は製品を作るための素材や部品の取り扱いを管理する機能です。

製品の製造に必要な素材・部品の購入や支払いの管理、
入庫や出庫などを記録することによって、
仕入れや在庫の管理
などを行います。

先ほどのMRPによって算出された必要数をもとに、
素材・部品を仕入れるための発注や受入の機能を持っています。

生産計画やMRPとの関わりが深く、
生産管理システム内に搭載されていたり、
連携されていることが多いです。

◆進捗管理

続いては進捗管理の機能です。

進捗では仕入から生産、出荷までの全体の流れを管理し、
計画通りに進んでいるかどうか、
遅れや進みが無いか確認する機能
が含まれます。

◆出荷管理

続いてが、出荷管理の機能です。

得意先からの受注に対して、遅延や出荷ミスを防ぐための機能です。

間違った製品を出荷してしまったり、
納期までに出荷準備が間に合わない、
なんていうことが起きないようにシステム化されています。

出荷するための指示書や、
照合結果、出荷の記録を残しておく機能
があります。

◆在庫管理

続いては在庫管理機能。

完成品の他、製造の途中である仕掛品や素材・部品の在庫なども管理します。

適切な在庫管理を行うことでスムーズな生産を実現し、
納期遅れを防止しつつ
キャッシュフローも正常に保つ
ことができます。

在庫管理ができていなければ、
工場運営だけではなく、
会社大事な資産を把握できていない、ということなので重要な役割を持っています。

◆原価管理

そして、最後、原価管理では、製品ごと、
あるいはロットごとの製造原価計算や、
標準原価と実際原価の比較分析、間接材のコスト管理など、
生産活動に関わる原価の管理を行います。

部品の仕入価格や在庫などの情報から、
リアルタイムに最新の原価を反映できることが一般的です。

そのため、原価低減・収益拡大に向けた活動を最適化することができます。


ここまで、生産管理システムの基本的な特徴や機能について説明しましたが、
これらのすべてが備わっているシステムもあれば、
必要最低限の機能のみを搭載している場合もあると思います。

ぜひ、生産管理の業務とシステムの関係性をつかんでおいてください

生産管理関連のその他システム

効率的で品質を担保した生産管理の業務を行うためには、
ERPや生産管理システムだけでは補いきれない部分が存在します。
関連したシステムやツールの例をいくつか紹介します。

◆倉庫管理システム

まずは、倉庫管理システムが挙げられます。

これは、在庫管理だけではなくて、
ピッキングや入出庫の指示を出したり、
より細かく製品の所在を管理するロケーション管理機能が備わっています。

効率的な物流業務をするためには必要なシステムです。

◆ハンディターミナル

続いては、ハンディターミナルです。
多くの製造業では一般的に使用されていますが、
主にQRコードを読み取ることで
製品の移動実績や生産実績を計上するため
に使用します。

現在ではスマホ型のものや、
腕や頭につける形のものを出てきています。

また、QRコードだけではなく、
電波で読み取るRFID技術を用いて
効率的な読み取りをしている会社も多くでてきています。

◆トレーサビリティ

続いては、トレーサビリティという考え方です。

これは追跡可能性と言って…
ものが作られてから、お客様のところに届くまでに、
いつ、どういう生産ロットで生産され、
どのルートで辿ってきたものなのかを記録しておくために
必要になってきます。

品質的な問題が発覚したり、クレームが出た際に、
被害の範囲を特定するために必要な機能です。

◆BIツール可視化系

そして、最後がBIツールです。

生産管理システムは主に計算や、
データの管理が目的に作られている場合が多いですが、
BIツールはKPIや各種管理項目をすぐに分析できるように、
データの可視化に特化したツール
を指します。

必要なデータをもとに自動的にグラフ生成をしたり、
より高度な分析機能が搭載されているモノが増えてきています。

まとめ

本日のまとめです。
生産管理をしている多くの人は、
生産管理システムを操作していると思いますが、

その全体像や役割を理解できていない人も多いです。
今回紹介したのは基本的な一部分にすぎません。

今後も解説動画や解説記事をを発信していきますので、
学び続けていってください。


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