製造業における環境問題
近年、国際社会では、
地球規模での環境保護が大きなテーマとなっています。
そこで今回は、企業の活動と環境の関わり方を考えましょう。
これまでの「大量生産、大量消費、大量破棄」という企業活動が、
環境に弊害をもたらしていることは今や明白な事実です。
現在、企業に求められているのは、
よいものをタイムリーに顧客に提供すると同時に、
地球環境に配慮した事業を展開することです。
目次
製造業が担うべき環境負荷への責任とは
特に製造業では、商品の生産活動そのものが環境に大きな影響を及ぼします。
製品の種類によっては、
製品ライフサイクル全体(素材製造→製品製造→使用→破棄・リサイクル)を通して、
環境への負荷は大きなものとなります。
それゆえ、製品の生産・設計の責任者は、
生産時や製品ライフサイクルが環境に与える負荷を十分に考慮し、管理しなければなりません。
「ISO14001(JISQ14001)」という文字をよく見かけると思いますが、
これは1997年に制定され、全世界で最も普及している環境管理の国際規格です。
企業が環境管理を継続させていくには、
ISO14001を参考にしたシステムを構築するとよいでしょう。
もちろん、ISO14001の取得は強制的なものではありません。
企業が環境管理システムや仕組みを作り上げることが大切なのです。
工場が配慮すべき環境問題とは
工場が特に配慮すべき環境問題にはこんなものがあります。
◆大気汚染
二酸化炭素のほか、窒素酸化物や有機化合物、二酸化硫黄などの空気を汚す原因となる物質が、
排ガスなどに含まれて排出されることで空気が汚れ、大気汚染が発生します。
アレルギー症状やぜんそくといった健康被害が出ることもあり、
大気汚染による公害としては「四日市ぜんそく」が有名です。
また、近年は塗料やインク溶剤に含まれるVOC(有機化合物)による
光化学スモッグも大きな問題となっています。
◆水質汚染
化学物質や有害物質を含んだ工場排水が川や海に流れ込むと、
水質の悪化により生態系や健康に悪影響を与えてしまいます。
水質汚染による公害病では、メチル水銀化合物による「水俣病」の被害が有名です。
◆廃棄物処理
工場では排ガス、排水以外にも、
生産活動の過程でたくさんの廃棄物が発生します。
鉄クズ、廃油、ダンボールなどさまざまな種類があり、
これを処理するためにまたエネルギーや環境資源が必要になってしまいます。
また、適切な処理をする費用や手間を惜しみ、
不法投棄するという問題が発生することもあります。
◆天然資源の枯渇
天然資源には限りがあります。
燃料となる石油や石炭、天然ガス、材料とする木材なども、
限りある資源として使いすぎない配慮が必要です。
これらの環境問題に配慮して環境対策に取り組むことは、
環境を守ることはもちろん、
取り組みの過程でコスト削減や新しいビジネス創出のチャンスがあったり、
企業の評価が上がって認知が広がったり、
優秀な人材確保の可能性が広がるメリットもあります。
環境への影響を可視化する
環境パフォーマンスデータを集計できていない工場は、
生産活動と環境とのつながりの認識が不十分のまま、
環境を壊しかねない生産活動を続けることになります。
環境パフォーマンスデータとは、
・原材料の投入量
・エネルギーの使用量
・化学物質やCO2の排出量
・廃棄物の発生量
など、測定可能なデータのことです。
本来、これらのデータは、使用される物質ごとに把握しておくのが望ましいのです。
「測定なくして管理なし」という言葉が表すように、
測定値が把握できなければ的確な環境管理は不可能なのです。
環境保護を進めることのメリット
また、環境保護には費用がかかるため、
法規制以上の環境管理活動は経営上でマイナスになるという考え方もあります。
確かに、環境に配慮した設備の導入にはコストがかかります。
しかし、効率性を追求していくと、
結果としてコストダウンとなり、
環境の保護につながることも多いのです。
顧客側も、地球環境の保護は企業の使命であるという考え方が広まりつつあり、
環境管理に力を入れることは、企業のイメージアップにもなるでしょう。
前述のISO14001についても、認証を受けている企業は多いものの、
実態はすでに形骸化しており、認証の維持が活動になってしまっているケースが見られます。
このような問題を避けるためにも、これからは環境管理の意味を正しく認識し、
システム構築をリードできる人材が強く求められることでしょう。
おわりに
今回は環境問題の一部を取り上げましたが、
まだまだ対処すべき問題は多く存在します。
SDGsやカーボンニュートラルといったキーワードについてもこれから解説していきますので、
ほかの記事もぜひ読んでみてください。
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