製造業におけるスキル管理

製造業におけるスキル管理は
「力量管理」とも呼ばれ、
以下のような目的を達成するために多くの企業で実施されています。

• ISO9001の取得
• 人材育成
• 組織力の強化

さまざまな面でスキル管理及び、人材教育が重要視されてきています。
順にみていきましょう。

ISO9001の取得

ISO9001とは、
国際標準化機構（International Organization for Standardization）が定めた、
「品質マネジメントシステム（Quality Management System ＝ QMS」）」の国際規格です。

改訂年度を含めた「ISO9001：2015（JIS Q 9001）」という呼び方もされています。

この規格は、世界中で多くの様々な企業や団体等で認証取得がされており、
この認証を取得する事はいわば、
「この組織は一定の国際基準を満たす品質管理の仕組みを持っているところですよ」という証明になります。

スキル管理や業務マニュアルの整備を行うなど、
人材教育や育成によって業務品質を維持できているかどうかも重要視されます。

社員のスキルを適切に管理・向上できていない状態の場合、
スキルのブラックボックス化やバラツキが生じやすくなります。

それにより、一貫した品質の製品を生産することができず、
業務品質の均一化ができていない可能性も高まり、ISO9001の基準を満たすことは難しいでしょう。

そのため、ISO9001の取得の観点からも、
スキル管理をもとに適切な研修や教育を行うことが重要です。

スキル管理が重要な理由

製造業における人材育成において、スキル管理が重要な理由は以下の5つです。
• 人手不足の解消
• スキルやノウハウの共有による技術伝承
• 業務標準化による生産性の向上
• 公平な人事評価の実現
• 変化する外部環境への対応

◆人手不足の解消

適切なスキル管理を行うことで、人手不足を解消できます。

製造業では技術の進歩が早く、最新の専門知識や技術を持った人材の需要が高まっています。

しかし、スキルを持ったベテラン人材の高齢化が進んでいる一方、
技術伝承が上手くいかないことや、
少子高齢化の影響でそもそも市場における人材の数が減少していることが原因で
最新技術に精通した人材が不足しています。

そのため、必要なスキルを備えた人材を獲得することがいっそう困難になっています。

製造業では、スキル管理を適切に行うことで
人材採用ではなく社員のスキルアップに注力し、人手不足を解消することが重要です。

◆スキルやノウハウの共有による技術伝承

スキル管理を行うとスキルやノウハウを可視化・共有できるようになり、
技術伝承が円滑に進みます。

製造業では技術やノウハウを活かしてモノづくりを行うことで
他社よりも高い技術と競争力を維持し企業を成長させることが可能です。

しかし、経験豊富な社員が退職する際に
その技術やノウハウが引き継がれず、
企業の資産として蓄積できないことがあります。

そのため、社員のスキルを管理・共有することで
「形式知（可視化され共有できる状態の知識）」とし、
スムーズに技術伝承できる環境を整えておくことが重要です。

多くの製造業では技術伝承を紙ベースの作業手順書、
そして口頭によるOJTで取り組んでいますが、
これらだけでは経験者のみが理解できる複雑な技術や微妙な技能がなかなか伝わらず、
品質不良につながってしまうケースが散見されます。

この生産管理プロフェッショナルコミュニティも、
技能伝承が進まない課題を解消する目的で開設されています。

スキル管理をする目的や、影響度について見ていきましょう。

◆業務標準化による生産性の向上

従業員の能力や力量を把握して必要とされるスキルを洗い出し、
洗い出したスキルを従業員全員が持つように教育することで業務を標準化することができます。

業務標準化を進めることは結果として生産性の向上につながるため、
企業が取り組むべき課題だといえるでしょう。

一貫した品質の製品を効率よく生産するためには、
業務プロセスを標準化する必要があります。

そのため、社員が持っている技術や知識をもとに研修を行い、
作業のバラつきを抑えることが大切です。

業務プロセスが標準化されていない現場では
作業手順のバラつきにより不良率や手戻り作業が増加するほか、
ヒヤリハットや労働災害など安全面のリスクも高まる可能性があります。

◆公平な人事評価の実現

公平な人事評価を実現するためにも、スキル管理を行うことが不可欠です。

スキル管理を行うことで、各従業員が持つスキルを客観的に計測・記録できます。

そのため、スキル管理で明確化された個人の能力をもとに
人事評価を行うことで評価者個人の感情や主観が入り込む余地がなくなり、
成果や努力を公平に評価できるようになります。

◆変化する外部環境への対応

変化する外部環境に対応するためにも、
従業員の能力や力量を把握することが重要です。

技術の進歩や常に変化する市場ニーズに対応するには、
製品の開発や生産方法を柔軟に変更する必要があります。

そのため、スキル管理により社員ひとりひとりのスキルを正確に把握し、
技術の進歩や市場ニーズに合わせてスキルアップできる体制を整えることが不可欠です。

◆技術革新によるスキルの陳腐化

技術革新によるスキルの陳腐化に対応するためにも、
スキル管理を行う必要があります。

新しい生産技術や機械の導入を行う際に
従業員が専門知識を持っていなければ、
業務効率や品質が落ちる可能性が高いです。

そのため、技術革新がもたらすスキルの陳腐化に迅速に対応し、
従業員の能力を最大限に引き出すためにもスキル管理を行うことが重要です。

◆品質リスクの増加

社員のスキル管理は、製品の品質を高めるためにも重要です。

社員が製造プロセスや設備の知識を持っていない場合、
操作ミスによる不良率の増加や生産性の低下が起こる可能性が高いです。

そのため、製品の品質を高めるためにも、
社員のスキルアップを行う必要があります。

おわりに

製造業における人材育成はいつの時代も重要視されています。

製造部門は定常化された作業や、
言語化された手順が多く教育もしやすいかもしれませんが、
生産管理のような業務は、人材育成に悩まされている職場も多いのではないでしょうか。

ぜひ、人材育成・教育の観点においても理解を深め、
技術継承を行える体制を築いていってください。